読書
文豪森鴎外の息女であると謂う一点以外、森茉莉氏のことには知識を持ち合わせていません。偶さか近場の書肆を訪った折に其の一角にちくま文庫の展示即売があって、置かれていた一冊を購いました。「贅沢貧乏のお洒落帖」と謂う書名に惹かれるものがあったか…
「親の臑齧り」と謂う輩は何時の世にも悪事の如く猖獗を極めているようで、落語の演目にも「臑齧り」なんて咄があります。 裕福な育ちで器量好しの娘さん。理由は分かりませんが、どうにも結婚の縁がつきません。何度か婿さんを取るものの、三日も居着いた例…
「本屋、はじめました」。素敵な響きですが、人生でこの言葉が耳朶に触れる機会を得ることは盲亀の浮木でしょう。2006年度に14,555店あった書肆は、2022年度には8,169店へと逓減しており、経営の難易度が高いであろう事は想像に難くありません。衰勢明瞭な商…
ユヴァル・ノア・ハラリ氏「サピエンス全史」を読みました。中中に重たい内容の胸ふたがれる思いを読後に要する典籍で、壱読では理会を纏められません。其の上で、當書に依れば吾吾は兄弟姉妹たる類人猿や、多くの他種多種の生物を絶滅に至らしめた結句、食…
薄い赤茶色をしていた今朝の空。だんなは寝惚けた軽い脳味噌で「あ、新潮文庫の本文紙の色だ」なぞ考えていました。老眼の進んだ身にも優しい紙色。やはり新潮文庫は良いなあ、と引き續いてヒプノポンピアから醒めずにくだくだしい事がまんじ巴に絡む裡に、…
小川糸氏の「とわの庭」を読みました。 主人公は生まれながらにして盲目で、唯一人愛されていた母親にも捨てられてしまいます。25年間、外界と一切関わること無く生きていた彼女ですが、世を憾まず、己を憾まず、そして母を憾むこともなく自分の人生を取り戻…
「おひとりさま日和」は6人の作家が書き下ろした掌篇集です。物語は連作ではなく凡て独立していて、當然登場人物も物語の舞台も異なります。共通しているのは、主人公が皆女性であると謂うこと。中年から老年がひとり住まいで経てている暮らしぶりが異なる筆…
吉田健一氏は「莫迦野郎」解散で識られる吉田茂元宰相の子息で、自民党副総裁の麻生太郎氏は甥にあたる政治との係わりの強い家柄にありながら、ご自身は英文学者にして食に精通したグウルマンでありました。亦た大層な吞兵衛だったようで、辻留の店主である…
池井戸潤氏の「半沢直樹 アルルカンと道化師」を読みました。今回は年次的には一番古い、則ち若い時代の半沢直樹の物語ですが、安定の勧善懲悪物。桃太郎侍サラリーマンになる、みたいな感じです。 池井戸潤氏は「赤い銀行」に勤めていた経験がおありで、た…
最近の記事を読み返してみますと、愚痴っぽいやら悲観主義的な論調が多くて、此れは何やら心持ちがくさくさしているのではないかと思い至りました。 時間と財布尻が赦せば、温泉でも訪って美味しい当地物なぞ戴いて、手当てをするのも一案でしょうが、コロナ…
俳人の夏井いつき先生の著作「絶滅寸前季語辞典」は巻末の解説にある通り「読んで楽しむ季語辞典」と謂えます。抑、俳句の季語なぞ数えるくらいしか識りませんが、此れは絶対に詠み人が居ないだろうとものが縷縷挙げられています。 冬の季語で特に変わり種な…
ジャン・ポール・サルトルは自署「シチュアシオン」で「選挙は見え透いた罠」であると述べています。選挙が民主主義の象徴である一方で、政治家が選挙を利用して自分たちの利益を追求する一面を持つと謂う意味だと思いますが、シチュアシオンXの出来から略5…
英国の経済専門誌であるエコノミストが年に2回発表している「ビッグマック指数(The Big Mac Index)」。どんな指数なのか、野口悠紀雄氏の著書「プア・ジャパン」から引いてみます。 これは、「ビッグマック価格がアメリカと等しくなる為替レート」に比べて…
ジム・ロジャース氏の「捨てられる日本」を読みました。著者については、世界三大投資家の一人であり、アベノミクスを厳しく批判し、矢鱈と北朝鮮を投資先として推している程度しか識りません。本書でもアベノミクスについては全面的に否定していると謂って…
イーロン・マスク氏がX(旧Twitter)について、すべての利用者に対して課金制とする可能性に言及したとか。うちは利用していないので全くの風馬牛なんですが。 背景には色色な事情や前提があるのでしょうが、このニュースを目にしてだんなが思い起こしたのは…
何度読み返しても学びがある。読む度に付箋が増えていく。 付箋だらけになったら、もう一度読み直して付箋を剥がしていく。枢要を刻み込んで自分のものにする。しかるに軽い脳味噌は殊更簡単に命題を喪ってしまう。 そしてまた付箋を片手に再読する。そんな…
「年収443万円」。国税庁が毎年発表する「民間給与実態調査」によれば、2021年の給与所得者の平均年収の額面金額です。手取額ではありません。税金や社会保険料を差し引けば、懐に入るお錢は月30万円弱くらいでしょうか。 小林美希氏の「年収443万円 安すぎ…
ダニエル・キイスの「24人のビリー・ミリガン」を読んでいるのですが、上下巻に分れ小説自体の紙数が多い上に、主人公の人格が24にも解離しています。ために、中中進み行かない。再読にも拘わらず、亀歩牛歩の低空飛行。加齢が起こりで、読書力も衰えている…
島崎藤村の「破戒」を初めて読んだのは小学生の時だったと思います。難しい漢字や表現が多く、亦た時代的或いは社会的背景に無智な侭に読んだので、全く理会することが出来ませんでした。その後ものろのろと知識を補完しながら何度か読み、今回の再読に至り…
伊集院静氏の「伊集院静の流儀」を再読。平成23年ですから、10年以上前に版行された著書です。就中、胸を拉ぐ一文がありました。 この頃、自分を恥じる。青二才は何も知らず父によく逆らっていたと。同時にたった一言でいいから父を尊敬していたこと、感謝し…
ラッセルの著書「幸福論」。第一部、第9章「世評に対するおびえ」より。 ある人が適切な環境で、適切な職業についたあかつきには、たいていの場合、社会的迫害を受けないで済む。しかし、彼が若くて、彼の長所がまだ証明されていない間は、無知な人びとから…
ドストエフスキーの「地下室の手記」を読みました。40歳の主人公は、人生の半分を地下室に引き籠って過ごしています。自意識と自尊心が高く、合理的な思考や行動は愚か者がすることだと考えている。ために、當然に社会に適合できない。両極端な感情と思考の…
政府が掲げる「女性版骨太の方針」。曰く、大企業中心の東京証券取引所プライム市場の上場企業を対象に、2030年迄に女性役員の比率30%以上を目途とするそうで。 結構なことじゃあございませんか。女性の地位向上や役員登用を助勢する取り組みには賛成ですが…
だんなにはとても小説を書き上げる能力なぞはありませんが、森沢明夫氏の「小説の書き方」と、平野啓一郎氏の「小説の読み方」を読みました。小説家はどの様に物語を組み立てているのか、作品を読み解く着眼点をどこに置いているのか。著者がいずれも小説家…
幼児期の虐待や心的外傷により基本人格とは異なる交代人格が現出する「解離性同一性障害」。性格だけでなく、表情や声色、筆跡も変化すると謂います。「五番目のサリー」は分裂した交代人格を融合し、一人の人格を取り戻す過程は、再読でしたが大変興味深く…
昨日の記事で触れたharu氏の著作「ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。」についてもう少し。 著者は解離性同一性障害以外に性同一性障害、発達障害と様様な「生きづらさ」を抱えています。生きづらさを感じるのは何故でしょう。巻末に解説を寄せて…
haru氏の「ぼくが13人の人生を生きるには身体がたりない。」を読みました。著者は主人格の裡に12人の交代人格が共生する、所謂「解離性同一性障害」です。工業高等専門学校の電子系通信学科を卒業後、通信制大学の心理学部を経て現在は放課後デイサービスの…
我思う故に我あり。 突然の訃報に悲嘆の止まない坂本龍一氏は、中学時代からデカルトの「方法序説」を手に取り、哲学に親しんでいたそうです。だんなは未だに理会が及んでいません。天才とは斯くも高みに在るものなのですね。 方法序説の刊行当時の正式名称…
飲食店での迷惑行為が続いてますねえ。特に廻転寿司が多いように思いますが、残念なことです。あの手の輩をね、どちらかの旦那衆が客単価五万円くらいの鮨屋に連れて行ってくれませんかね。そうすりゃあ、安くて質の高い寿司を気軽に食えるってのがどんだけ…
だんなは書肆に居る時間が好きです。一階層で広く、動線が伸びる結構。個店で流行や新刊に囚われない品揃えがあれば、一時間でも二時間でも居座ってしまいます。購いたい本が決まっている場合、通販は大変便利ですが、偶然書肆で手に取った本が存外に面白く…