幼児期の虐待や心的外傷により基本人格とは異なる交代人格が現出する「解離性同一性障害」。性格だけでなく、表情や声色、筆跡も変化すると謂います。「五番目のサリー」は分裂した交代人格を融合し、一人の人格を取り戻す過程は、再読でしたが大変興味深く読むことが出来ました。サリーは凄惨な過去がために、恐怖や痛みを担う、或いは人前で積極的に自分を表現することが得意であったり、藝術や音楽を愛する人格などに分裂していきます。其れ等の交代人格を統合し、より豊かな感性と感情を得ていきます。交代人格が表に出ている間の記憶が無いため、精神的な不安に苛まれていたサリーは治療を決意し、過去の忌まわしい記憶や交代人格と向き合っていきます。
重い主題ではありますが、読了して暗澹たる思いに胸ふたがれることはありませんでした。同じ作者の小説では「アルジャーノンに花束を」の方が気持ちの行き場を探すのに往生した記憶があります。機会があれば再読したいとは思いますが。
小説はやはり面白い。