うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

50-1 スナッフルスのチーズオムレット。

 

紫蘭や右手(めて)に猪口左手(ゆんで)に大福。ふうふは飲み手ですが、甘い物も取ります。函館の洋菓子、スナッフルスのチーズオムレットはお気に入りの一つ。偶さか近間に期間限定で出店しており、早速贖いました。

創業者は「函館を出ず」を信条としており、有楽町や札幌に店が出たのは暫く時を経ててから。2代目の社長になって纔かに旗幟鮮明に蔭りが生じたのでしょうか。それでも内地では物産展など求める機宜を得難い一品です。

比類のない食感とくちどけを得るために絶対に冷凍しないのも信条。こちらは一分一厘の矯めもないと思われます。ふうわりとあたり、はらりとこわれたら口に残るのはチーズの残り香だけ。見目形と名実一体のかどのない、なよやかな味わい。心地よく気分も柔らかくなる無二無三のオムレットです。右手にワイン左手にチーオムなぞも逸楽かと存じます。

お取り寄せも可能ですが、ふうふは盲亀浮木の時宜を得るまで俟つことにしています。そのほうが層一層味わい深くなると思うのです。

箱の裏、製造者欄には「有限会社ペシェ・ミニョン」とあります。ペシェ・ミニョンは仏蘭西語で小さな罪という意味も持つようで、薔薇にも同名の品種があるとか。美しい薔薇には棘がある。小さな罪も重ねれば皮下脂肪は大きく肥え太る。何とも罪作りなお菓子であります。

 

 

日々の100。

 

暮しの手帖編集長で、書店経営をされている松浦弥太郎さんの「日々の100」、「続・日々の100」を読みました。著者はまえがきで「この本で僕は、日常生活の中でつきあっているモノを100選んで、そのモノとのつきあい方や出合い、想いや記憶を、あれこれと自由に書いた。ごく近しい親友のようなモノから、出合ったばかりの新しい友だちなモノまでモノはいろいろある」と書いています。「100のモノなら、なんとか揃うだろうと思ったのは浅はかだった。モノであろうと100となると尋常ではない」と塗炭の苦しみだったかと思いきや、2冊で206篇のモノがたりを練り上げています。だんなも100のモノ一覧を作成しようと立ち掛かりましたが、何とか50を吐き出すのがやっとの有様でした。年齢は然程違わないんですが、人生人品の厚みが足元にも及ばない証左なり。

一篇が一枚の写真と600字程の短文で構成され、モノと著者の関係性を纏めています。写真も文章も清潔感があり、著者の暮らし方を湛えるよう。手本と見習うには、だんなでは荷が勝ちすぎます。

正続2冊から心惹かれたモノたちを列叙しますと、

種子島の種子鋏

・SMYTHSONのアドレス帳

・『魯山人料理王国

・理容米倉の耳かき

・デュアリット社のトースター

・梅好の京ちらし

新美南吉の「ごんぎつね」

・松田のマヨネーズ

・78年式ポルシェ911

孰れのモノも著者の愛用品。写真も自身で撮影されたそうです。

向後良いモノと出合い、永く大切にと思いもうけますが100に届くのは何時になるでしょう。

不日だんなが一粒えりした50のモノを逓次撰します。全く面白くない、くだくだしいこと請け合いですが、それでもお付き合い頂けたら幸いです。

 

 

小閑。

 

5月25日は「主婦休みの日」と知りました。家事は毎日毎時絶えることなく、諸般広汎な事事に立ち掛からなければならない。至重の働きです。良く家事労働を年収に換算すると、なんていう記事がありますが、貨幣価値では秤れない尊貴な仕事だと思います。だんなは家事全般てんから駄目で、手伝おうとて流れを塞き止めるばかりで邪魔にしかなりません。

休んで欲しいと思いますが、だんなに出来るのは精精肩を揉むか愚痴を聞くぐらい。その肩凝りと苛苛の原料がだんななんですけれども。

主婦休みの日は年に3回あって、次回は9月25日。温泉旅館なぞで上げ膳据え膳、骨休めをして貰いたい。コロナが収束するのを祈るばかりです。誓ってだんなが行きたいからではありませんよ。

 

夏襟や月命日のりんの音

 

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陳弁。

 

車の名はアルファロメオ4cスパイダー33ストラダーレトリビュート。33はトレンタトレと読むそうだ。古典の前座噺かよ、と突っ込みたくもなる。流麗なデザインと画期的な結構を持ち、老舗のイタリアンブランドが産んだ奇跡の一台と称賛を浴びたが、販売不振か或いは不採算が原因か、残念ながら2020年の4月に終売となってしまった。最後に国内50台の限定車が販売され、手動で屋根の取り外しが出来る型式に与えられたのが文頭の名だ。2020年末に世に出ると告知されたが、俟たずに瞬間蒸発する様に売り切れていた。購入を思い悩む猶予もなかった。そして年末を迎える前に父が鬼籍に入った。

 

アルファロメオの紋章には蛇が象られている。このブランドには多くはないが父との思い出があった。故事付ければ父は巳年でもある。最早贖うこと叶わぬとなると、余計に手に入れたいと思った。思い当たる伝手を全て辿ったが当然在庫は無い。キャンセルも期待出来ないと言われたが、一縷の希みを残した。

 

愛知のディーラーからキャンセルが出たと連絡があったのは、父の佰日忌法要を終えた午後だった。スパイダーの右ハンドル。最も欲しいと思っていた。後で聞いたが、7台しか生産されなかったそうだ。

納車までは一年か一年半か、コロナの影響もあり良く分からないという。その間にキーケース、キーホルダーに手袋、そして靴を誂えた。凡そ車に触れる物は、きちんとしたかった。

 

車は、暁闇から少し、朝露に潤びた薔薇の様な色をしていた。父が好んだ風情であった。小さなスポーツカーだし良いかとも思ったが、己身に顧みて気羞しいので違う色に変えてしまった。フィルムで覆ったので、いつでも出自の色に戻すことは出来る。代わりに靴は似た色を選んだ。

 

父を持ち出したのはただの言い訳、詭弁だ。所詮は自分の物欲を満たしただけに過ぎない。相変わらず逃げてばかりだと怒っているだろう。

 

マンションの立体駐車場には少なからぬ台数の車が収まっている。その一番はやく出られるパレットに4cスパイダーは居る。狭くて人も物も載らない。五月蝿いし揺れる。機械の借力は期待出来ない。そんな車だ。せめて、はやく走り出せる様にという思い遣りだろうか。

 

無骨な、不器用な揺籠だと思った。ずっと乗っていたいと思った。

 

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辨当。

 

便利、好都合なことを意味する中国語の便當が語源だそうです。だんなもおくさんが料った辨当を職場に持っていき、お昼に食べていた時期がありました。蓋に手を掛けると何とはなしに心弾みます。各人各様、色々と思い入れや思い出があるたべものではないでしょうか。手許の書冊に索めても、辨当に関する著述は縷縷多出して参ります。今日は種もないので、以下無作為に抜萃借用致しました。

向田邦子/夜中の薔薇、食らわんか」

海苔弁である。まずおいしいごはんを炊く。十分に蒸らしてから、塗りのお弁当箱にふわりと三分の一ほど平らにつめる。かつお節を醤油でしめらせたものを、うすく敷き、その上に火取って八枚切りにした海苔をのせる。これを三回くりかえし、いちばん上に、蓋にくっつかないよう、ごはん粒をひとならべするようにほんの少し、ごはんをのせてから、五分ほど蒸らしていただく。

松浦弥太郎/日々の100、べんとう箱」

曲げわっぱはご飯用として使っている。曲げわっぱの利点はご飯が冷めても美味しいということだ。わっぱ自体がご飯の水分を取ってくれるので入れたご飯がべたべたしない。炊き立てよりも、入れて少し経ってからのほうが美味しいくらいだ。ご飯にふりかけをかけて、梅干しでもひとつあればそれで充分。

沢村貞子/わたしの台所、私のお弁当」

私はいつも機嫌がいい。朱塗りの三段重はつやよく磨きあげられて、手ざわりが暖かいのだもの。一番上には好物のお新香ー ほどよくつかった白いこかぶと緑の胡瓜。傍には黄色も鮮やかな菜の花づけ。銀紙で仕切った半分には蜂蜜をかけた真っ赤な苺の可愛い粒。中の段には味噌づけの鰆の焼物。その隣りの筍と蕗、かまぼこはうす味煮。とりのじぶ煮はちょっと甘辛い味がつけてある。上に散らした小さい木の芽は、朝、庭から摘んだばかり…プーンといい匂いがしている。隅にはきんぴらの常備菜。下の段の青豆ごはんがまだなんとなくぬくもりがあるような気がする。

「内田百閒/御馳走帖、腰弁の弁」

アルミニュームの弁当函に麦飯を詰めて携行する事にした。机の抽斗に入れておいて、そろそろ廊下の浮き上がつて来る二時半か三時頃に食べる。おかずがうまいとご飯が足りなくなるから、塩鮭の切れつ端か紫蘇巻に福神漬がほんの少し許り入れてある計りである。

池波正太郎/食卓のつぶやき、弁当(A)」

母は、月に一度ほど〔カツ弁当〕というのを持たせてくれた。デパートで売っている一口カツを二つに切り、タマネギと卵で綴じたものを御飯の上へのせる。カツ丼の弁当版なのだが、私の家では、カツレツと卵を煮るとき、ウスター・ソースで煮る。少し水を加え、ほんの少し砂糖を加えたソースの出汁にする。いまでもそうしている。

團伊玖磨/舌の上の散歩道、駅弁」

函館からの鉄道で長万部を通った時、駅弁を買った。粗末な蓋を開けた時吃驚した。ご飯の上に鰈の煮こごりが一尾載っているだけだった。そして、これは滅法に美味しかった。今でもその味を覚えている程だから、余程美味しかったのだと思う。

森下典子/いとしいたべもの、幸せの配分」

※この随筆は全篇を通じて崎陽軒シウマイ弁当愛が綴られた麗筆です。是非一読をお奨めします。

伊丹十三/女たちよ!、ピクニックの巨大な昼食」

直径三十センチくらいの、さよう丸い座蒲団のようなパンを使う。このパンを、やはり水平に二つに切って、サラド・ニソワーズを大量に詰め込む。これは遠足のお弁当に好適である。作ってから三十分くらいおくと、サラダのドレッシングがパンに浸みこんで、パンが実にいい具合に潤びるのである。

 

どれも美味しそうですが、だんながどうしても食べたいと思う極め付けはこちら。

子母澤寛/味覚極楽、三重かさね弁当〈舞踊家元 花柳寿輔さんの話〉」

弁当は烏森「末源」の朱色に塗った三重かさねが私には一番です。「鶏のうま煮」などの上手な味付けはちょっと外にはありません。

新橋の老舗「末げん」ではないかと当たりはつけるものの、件の三重かさね弁当には行き当たりません。思いは募りますが無いものねだりはいい加減として、盛夏の前に4cスパイダーに家族と小さなお弁当を乗せて、少し遠出を楽しみたい。ね、おくさん。

 

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感謝。

 

お陰様を持ちまして、2021年12月22日に開設致しました当ブログの読者様が200人を超え、はてなスターも2万個以上を数えました。

皆様のお陰です。

一重にも二重にも感謝申し上げます。

ありがとうございました。

くだくだしく覚束ないブログですが、これからもどうぞふうふとエイトをご贔屓にお願い申し上げます。

 

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