うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

天地は万物の逆旅。

 

 最近の記事を読み返してみますと、愚痴っぽいやら悲観主義的な論調が多くて、此れは何やら心持ちがくさくさしているのではないかと思い至りました。

 時間と財布尻が赦せば、温泉でも訪って美味しい当地物なぞ戴いて、手当てをするのも一案でしょうが、コロナウイルスの蔓延を境にめっきりと尻が重くなってしまいました。心持ちが前に向いて行かないものですから、近間をうろうろとする許りです。

 せめて雰囲気だけでも感じ取ろうと、益田ミリ氏の「47都道府県 女ひとりで行ってみよう」を辿り読みました。書名の通り、著者が33歳から37歳まで毎月欠かさずにひとりで旅した47都道府県についての紀行文を纏めた本です。興趣深いのは著者の旅行への向き合い方で、以下書き出しを引いてみます。

 

日本には47都道府県もあるのに全部行かないのはもったいないなぁ。

というわけで、ひとりで全部いってみることにした。

目標は月に一度の旅。

青森に行ったついでに秋田にも、なんてことはしないで、

毎月毎月、東京からフラッと行くことにしよう。

月に一度の旅で、47都道府県をまわると4年かかるが、

別に急ぐこともない。

何かを学ぶ、などにはこだわらない「ただ行ってみるだけ」の旅。

むだかったかどうかは、旅が終わってからわかるんだろう。

 

 行ってみるだけ、と謂いながら、4度目くらいで「はっきりいって、もう飽きている。ひとり旅……。まだ3県しか行っていないのに、嫌になってきた」とごてる。けれど續けていくうちに、諸諸軟らかくなり興趣滾滾、結句、47都道府県周遊を完遂します。ガイドブックに目通しはするものの、無理に観光地に赴いたり、名物料理を策めるでもない。スーパーの惣菜で夕食を済ませるなど、取り立てて肩に過多な力を入れず、町に置かれている自分を愉しむ。こう謂う旅も良いかも識れません。

 だんなはこの先も、ひとり旅に出ることはないでしょうし、47都道府県凡てを訪うこともないでしょう。人生の余白は町に、旅にある。理会しているものの、町には出られず書は捨てられず、右手(めて)に本を左手(ゆんで)お酒で愚痴を吞み込む許り。今更可愛くないおっさんに旅をさせても、得るところは無いんでしょうねえ。

 嗚呼、結句亦たしみったれな咄になってしまいました。