うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

読書

江戸思草についての軽い脳味噌による思索。

260余年続き、盛事には150万人とも謂われる人頭を数え、世界でも有数の大都市だった江戸。根生まれた生粋の江戸者を指す「江戸っ子」という語彙は1771年の川柳が初出だそうです。鯔背で気風は潔し、意地と張りを本懐とし正義感が強く、歯切れと金離れが良い…

異星人と異邦人。

「じゃあ秘密を教えるよ。とてもかんたんなことだ。ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」。サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」で、キツネが王子に伝えた言葉です。良く識られる心に残る一節ですね。…

自動車旅行。

自動車旅行者を対象として駐車場を広くとった街道沿いの商店や食堂。ドライブインの定義のひとつですが、「自動車旅行」と謂う言葉は耳新しいですね。慥かに過般来ドライブインを利用する機会は得ていません。 だんなは子供の頃は病弱でした。父は疲れている…

親指と人差し指。

指圧の心 母心 押せば命の泉湧くー。指圧治療創始者、故浪越徳治郎氏の言葉です。向田邦子さんの「女の人差し指」に浪越氏を指すと思われる記述があります。「ディマジオと新婚旅行に来日したマリリン・モンローをマッサージした人へのインタビューで、指圧…

骨棘。

1918年、米国メジャーリーグの歴史に刻まれた「同一年度に投手として2桁勝利し、2桁の本塁打を打つ」という巨歩。レッドソックスに所属していたベーブ・ルースは、20試合に登板し、13勝7敗。本塁打は11本を放ち、同年の本塁打王となっています。エンゼルスの…

いまこそ、希望を。

アキレスと亀の背理とは「走ることの最も遅いものですら最も速いものによって決して追い着かれないであろう。なぜなら、追うものは、追いつく以前に、逃げるものが走りはじめた点に着かなければならず、したがって、より遅いものは常にいくらかずっと先んじ…

愛他主義。

新型コロナウィルスの感染が再拡大して流行の「第七波」に入り、毎日各地で感染者が最多数を更新していますね。BA.5株の矯激な感染力は、露骨に恐怖です。重症化の懸念は少ないとも謂われていますが、実際に自分が罹患したらどうなるかわかりません。他の人…

散り際千金。

内館牧子さんの小説、「終わった人」を読みました。書目に加えて、書き出しの「定年って生前葬だな」という言葉が胸を衝きます。主人公田代壮介は東京大学を卒業後、大手銀行に就職し、順調に昇進を重ねて39歳で最年少の支店長に抜擢。そして本人曰く「黄金…

銭形平次。

野村胡堂の小説「銭形平次捕物控」。長、短篇あわせて383篇が梓に鏤められたそうです。だんなは小説は未読です。識っているのはテレビ時代劇。平次が悪漢に天誅を下す必殺技、寛永通寶真鍮當四分錢の投げ錢に子供心を鷲摑みにされました。 最近、と謂っても…

50-9 イル ビゾンテの革文巻。

私を作ってくれたのは、1970年に偉大な職人ワニー・ディ・フィリッポさんが創立したイタリアの革製品生産者、イル ビゾンテです。革文巻なんて古臭くって分かり難い言い方はどうかと思います。素直にブックカバーといえばいいのに。私を購めたご主人とは3年…

くゆらす。

週刊誌アサヒグラフで1964年から2000年まで連載を続けた、團伊玖磨さんの随筆「パイプのけむり」。さよならパイプのけむりでの有終に至る全27巻からの撰集「味」を読みました。予予洗煉された麗筆と、夥多膨大な情報を小文で筆舌に尽くす筆力に圧倒されます…

わたくし小説。

「掃除婦のための手引き書」を読みました。著者ルシア・ベルリンの畢生は「1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育…

眠る偽者。

だんなは本を読んで瞼が垂れてくることは殆どありません。時無しに眼光を紙背に徹しているわけではないですが、読者中に眠気を感じているとすれば、それは書見の前から眠かったということで、活字を追って睡魔が惹起されるのは希です。 塩野七生さんの「男た…

小笠原流礼法。

最初にお断りしますと、だんなは小笠原流に知悉している訳ではありません。「室町時代に足利義満の臣小笠原長秀が創始した、武家故実から出た礼法」とて道聴塗説、典籍から得た知識です。 海軍軍人で清水次郎長とも親交を結んでいた、子爵小笠原長生の話を文…

にんじん。

癖の強い赤毛で雀斑だらけのルピック家第三子フランソワは、家族からにんじんと呼ばれ、須く底意地の悪い扱いをされているー。初読後、気持ちの折り合いが付かずにうろうろと居住まいが定まらなかったことを覚えています。にんじんが兄のフェリックスにまん…

日々の100。

元暮しの手帖編集長で、書店経営をされている松浦弥太郎さんの「日々の100」、「続・日々の100」を読みました。著者はまえがきで「この本で僕は、日常生活の中でつきあっているモノを100選んで、そのモノとのつきあい方や出合い、想いや記憶を、あれこれと自…

辨当。

便利、好都合なことを意味する中国語の便當が語源だそうです。だんなもおくさんが料った辨当を職場に持っていき、お昼に食べていた時期がありました。蓋に手を掛けると何とはなしに心弾みます。各人各様、色々と思い入れや思い出があるたべものではないでし…

因縁。

物事が生じる直接の力である因と、それを助ける間接の条件である縁。一見関わり合いが無い様に見える事象も実は結びついている。転じて、責任の所在を持たないことを承知で無理筋から病付かせる「因縁をつける」という言葉を産生しました。 前回記事の材本で…

主義。

ジョージ・オーウェルの「動物農場」。ひと月ほど前に読み終えたのですが、諸諸整理が難しく記事に纏まりませんでした。 農場で働く動物たちは、厳しい労働を強いられ搾取収奪される生活の邪悪を排除するため、逆乱により人間を追放します。二頭の英遇な雄豚…

煩悩。

本記事で108件目の投稿です。だんなは己心顧みてその数からタイトルの連想を得ましたが、煩悩の数や嚆矢にはくさぐさあり忌み数でもないようです。108本の薔薇は求婚の意、野球の硬式球の縫い目は108対、ゴルフボールは直径108ミリと多彩にご活躍の様子。 森…

芥子飯。

内田百閒の随筆集「御馳走帖」にある一文で、十銭を懐に歩いていると「自慢ライスカレー十銭」の立看板に行き当たり、食い気と財布尻を天秤に掛け思い悩んだ挙げ句到頭腹を括って店に入る、というだけの件りが百閒先生の麗筆で実に興味深い掌編となっていま…

韻文。

だんなは時折記事に五七五、十七音の定型詩を逼塞させています。俳句ではありません。聢と学んでおらず、規程の事解も浅薄だからです。心得ある方に「これは俳句にあらず」と指弾されれば一音の反句も持ちません。当然です。ですが「これは詩ではない」と高…

雪花菜。

江湖では豆腐を作るとき大豆から豆乳を絞った後に残る絞り滓のことで、語源は「殻」に丁寧語の「御」をつけた女房詞。空木の花に似ている為、卯の花とも。生理的熱量が低く高蛋白で食物繊維を多く含む栄養的に優れた食品にも拘わらず、滓とは謂われのない譏…

百鬼園忌。

4月20日が歿日と知り、内田百閒の随筆を読み始めました。「御馳走帖」は昭和21年と戦後から間を置かず、御馳走という聯想と縁近くない時代を背景として刊行された随筆集です。裕福な家に一人息子として生まれ、幼少期は祖母の寵愛を受けて不自由なく育った百…

交響楽。

中学2年生の時です。音楽の授業で、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の第3楽章を鑑賞しました。次の休日早速レコード(!)を買い、居間のオーディオにヘッドフォンを挿し大きめの音量で第3楽章ばかりを繰り返し何度も聴きました。亢奮を感じるも…