うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

50-9 イル ビゾンテの革文巻。

 

私を作ってくれたのは、1970年に偉大な職人ワニー・ディ・フィリッポさんが創立したイタリアの革製品生産者、イル ビゾンテです。革文巻なんて古臭くって分かり難い言い方はどうかと思います。素直にブックカバーといえばいいのに。私を購めたご主人とは3年位のお付き合いですが、どうもこういう無駄に遠回った言い方をする癖があります。矢鱈と横文字を使うのは宜しくない、なんて云っていますが、ご自分が苦手なだけです。内緒ですけど。今年、ご主人は私に40冊の本を包んで読んだようですが、どの程度内容を理解しているのか怪しいものです。

私は根拠もなく悪口を云っているわけではありません。ご主人は少しばかり粗忽に出来ていまして、私の手入れも物識らずがために行き届かないのです。ブログとやらに小賢しい文章を垂れ流している割には随分な唐変木でして、飼犬のエイトさんの方がよっぽど血の巡りがよろしい。

私が申し上げたいのは、こういうことです。写真を見て頂くとお分かりかと思いますが、イタリア製の鞣し革である私は本来美しい経年変化を遂げるところ、色が不揃いであったり痘痕のような染みが出来てしまいました。この責任の所在は問うまでもなく、粗忽で行き届かないご主人の、その雑な手入れにあるのです。私を正式にお使い頂く前には、一定期間日光浴を必要とするとか、うっかり水に濡らしてしまった時の対処の仕方とか、お肌の保湿のお作法であるとかを、この唐変木は全く知らないのです。

しかし、悪いことばかりでもありません。私を気に入ってくれて、長く使う心算はある様です。実は手入れを為損じたことは、ご主人も気が付いているのですが、やり直しが出来ないのは人生と同じだから大切に使うのだと云っていました。只の言い訳なのかも知れませんが。

イル ビゾンテの創始者、フィリッポさんは言いました。「雨が降ればどちらも濡れ、晴れればどちらも日にあたり、あなたが日焼けすればバッグも日に焼けます。あなたのイル ビゾンテはあなたの一部なのです。」と。物識らずのご主人は目にも耳にもしたことはないでしょうが、この言葉に免じて、暫くは唐変木とお付き合いすることにしてやります。