うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

主義。

 

ジョージ・オーウェルの「動物農場」。ひと月ほど前に読み終えたのですが、諸諸整理が難しく記事に纏まりませんでした。

農場で働く動物たちは、厳しい労働を強いられ搾取収奪される生活の邪悪を排除するため、逆乱により人間を追放します。二頭の英遇な雄豚が嚮導し守るべき七つの戒めを定め、教育や合議協働により農場を運営していきますが、幾何も経ずに見られる対立の萌芽。仮想敵を設定し、情報操作と教宣活動により七戒をも歪曲改竄し独裁者となる一頭の雄豚、ナポレオン。彼と側近は目が曇り自考の力を失った動物たちを虐使蹂躙し、権力を壟断します。農場を完全に支配した彼らは、圧政と簒奪のみ行う真の敵であった人間の似姿になってしまう、という寓話です。

刊行は1945年8月17日。日本で玉音放送が流れた僅か2日後とは驚きです。本書は著者自身の序文案からも読み取れるように、明確にロシア革命とその後のスターリニズムを風刺しています。スターリンを象った豚がナポレオンです。他の登場動物や作中の凶変が実在の人物或いは実際の史実の下敷きだと端倪するのも容易い。著者と出版社の大勇が築いた九仞の功、名著です。一部の書評や解説に、社会主義批判の書とするものがありますが、オーウェルウクライナ語訳版の序文で自身が「親社会主義」だと明言しています。

ウクライナ語版は独逸占領下にあったウクライナ難民キャンプでの頒布用として1947年に刊行されました。訳者によると、二千部を頒布したところで残部千五百部全てを米軍が押収し、ソ連に引き渡したそうです。世界が東と西に分けられ、1945年から44年間続いた対立構造を「冷戦」と称したのはオーウェルでした。時代が遷れば立場も変わる。本書は様様な政治的教宣発信の借力にもなったのでしょう。四海には千千の主義主張が産生され、非民主主義国が多数派となった現在の世態をオーウェルは予見していたのでしょうか。

「このお話の教訓は、革命が大きな改善を実現するには、大衆が目を開いて、指導者たちが仕事をおえたらそいつらをきちんと始末する方法を理解している場合だけだというものです」。自分の目で事実を確認し考え誤謬を糾す勇気を持つべきと理解します。だんなも衰えた蚤取り眼で事物を捉えるように心構えねば。

 

 

何だい藪から棒に。人の振りをした豚を見分ける方法を教えろってかい。そらあむつかしいことじゃねえやな。せえぜ鼻息をうかがってご機嫌取りをするこった。おだてられた連中は調子に乗って木に登るって寸法さね。