うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

僕、待ってるね。

 

 僕はエイト。黒毛のトイプードル。今は、やさしいおくさんとちょっとぼんやりしただんなさんと三人暮らし。ちゃんとお世話してくれるし、みんなでいると楽しい。毎日がふわふわのびのびしてる。

 僕は、おひさまと草のにおいがたっぷりあるところで生まれた。でも、すぐに両親と離ればなれになって、気がついたらやたらとまぶしくて、がやがやしていて、かたくてつるつるしたところにいた。毎日たくさんの人が来て、たまに抱っこしてくれたり、なでてくれたりする。抱っこやなでなでが終わると、またかたくてつるつるしたところに戻されて、そのうちあんなにまぶしかったのが信じられないくらい真っ暗になって、ぶるぶるしてもだれも来てくれなくて、しかたがないから体を丸めて寝ていると、またやたらとまぶしくなって起こされる。そんな日がつづいて、かたくてつるつるしたところは居心地がよくないなあ、と思っていたら、おくさんとだんなさんが迎えに来てくれたんだ。

 おくさんとだんなさんのお家には、僕の部屋もあった。やわらかくてふわふわでいいにおいがした。おくさんの作るごはんはおいしくて、つきっきりで僕のお世話をしてくれた。今もだけどね。ちょっとくたびれるくらい、みんなが僕をなでてくれた。そのころは、だんなさんのお父さんとお母さんもいたんだ。僕はひとりっ子だから、家族がたくさんになってうれしくて、むやみに家中を走り回ってた。そしておなかがすいて、おくさんにごはんをねだって、おなかいっぱいでやわらかふかふかでぐっすりねた。なんだか居心地がいいなあ、と思った。

 お家は居心地がいいけれど、お家の外はどうなっているんだろう。僕が生まれたところみたいに、おひさまと草とさわさわそよそよがいっぱいあるのかな。僕の両親とも会えるのかな。毎日いろいろかんがえていたら、ある日お父さんが僕に長いひものついた首輪をして、抱っこでお家の外につれていった。外はおひさまはいっぱいだったけど、いろんな音がして、知らないにおいがいっぱいして、見たことない大きなものがあちこちにあって、びっくりしてぶるぶるした。お父さんがそっとおろしてくれたところは、ふかふかじゃなかったけど、ぽかぽかしてた。気持ちよかった。ゆっくり歩きながら、草や花や、やわらかいものやかたいものを、たくさんくんくんした。両親には会えなかったけど、お家の外もあんがい居心地がいいなあと思ってお父さんを見たら、お散歩できたね、と言って笑っていた。お散歩。なんだか楽しくてうきうきするなあ。笑っているからお父さんもお散歩楽しいんだね。

 お散歩から帰って、待っていたお母さんのおひざでちょっとお昼寝した。お母さんは足が悪いから、僕みたいにぴょんぴょんできないし、一緒にお散歩も行けないけど、なでてもらいながら、おひざの上で寝ると気持ちがほやほやになる。目がさめるとおなかがすいていたから、おくさんにごはんをねだった。たくさんもぐもぐして、こんどはやわらかふかふかでぐっすり寝た。

 僕はもうすぐ九歳になる。お父さんとお母さんとは長いこと遊んでない。時々においがしたような気がして、いっしょうけんめいくんくんしたんだけど、会えなかった。僕の鼻があまり良くないからかな。でも、お父さんとお母さんのにおいはちゃんと覚えてるよ。

 お誕生日のプレゼントも、だいすきなおやつもがまんする。そしたらまた、お父さんとお散歩して、お母さんのおひざでお昼寝できるかな。そうなるといいな。でもむりしなくていいよ。やさしいおくさんとちょっとぼんやりしただんなさんがいるから。

 のんびり、待ってるね。