うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

寫眞は撮る者の魂も奪う。

 

 日本に寫眞の技術が伝わったのは江戸幕府末期と謂われています。当時の人人は寫眞を撮られると魄を抜かれると信じていたようですが、まあ二分位も凝と動かずに瞬きも欠伸も出来ないとなれば、間も歯も毛も垢も灰汁も毒気も伝家の宝刀も生き馬の目も抜けちまいます。魂魄だけで済むなら目っけ物です。

 三人並んで寫眞に収まると、真ん中の人は寿命が縮まる、なぞ謂うのも迷信の繋累なのでしょうか。だんなは寫眞寫りも悪くて、もとの不細工が層一層情け無いことになりますし、真ん中なんて座りが宜しくないったら此の上ない。寫眞も真ん中も、どちらも板につきません。其の分幾らかは息の根が長引いているのかしらん。

 さて、先日馳せ参じた伊太利亜車と仏蘭西車の催し。新旧交交のアルファロメオが並んでおりました。何れの個体も美しく、アルフィスティの末席を汚す身としては興趣滾滾、冩眞も端から恥も外聞も無く撮影しようかとも思いましたが。

 写真家ユージン・スミスの言葉、「冩眞は撮る者の魂も奪う」を思い出し、此れ以上大蛇の毒に魂魄を灼かれてもと思い留まりました。結句、収めた一葉。内燃機の傑作と謂われ、乗り手の魂を震わせるブッソーネV6です。

 此の名機を搭載した個体も刻一刻と喪われている、眞銘の絶滅危惧種になりつつあります。ために、魂を奪われる者は少なくない。エンジンは乗る者の魂を奪う、のです。

 

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