うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

布施のない經は讀まぬ。

 

 「本屋、はじめました」。素敵な響きですが、人生でこの言葉が耳朶に触れる機会を得ることは盲亀の浮木でしょう。2006年度に14,555店あった書肆は、2022年度には8,169店へと逓減しており、経営の難易度が高いであろう事は想像に難くありません。衰勢明瞭な商事で暮らしを立てようとするには、相当な気概と相応の暗黙知が必需と思われます。ために、書肆を開こうとする傑物は多士済済とは相成りますまい。

 「若者の活字離れ」なぞと年寄りが謂い出してから久しいですが、過去30年の「学校読書調査」によれば、小中高校生の月間読書冊数は横這いか微増です。一方で小中学校生の不讀率(調査月に讀んだ本が0冊)が5乃至10%であるのに対し、高校生は40乃至50%程度で推移しています。高校生になると「他の活動に時間を取られる」ために、読書量が減ってしまうようです。高校入学以降も本を讀む意慾と時間が維持捻出できるなら、「町の本屋さん」は無くならないかも識れませんね。

 「本屋、はじめました」の著者、辻山良雄氏は大手出版チェーンのリブロに勤務し、池袋本店マネージャーの任に就いた方で、本の仕入れや棚の作り方に関する知識はお持ちだったのでしょう。個人経営で新刊書店を開く事例は珍しいようですが、辻氏の書肆「Title」は創業から捌年を経てようとしています。氏の人と書の関係を解き分ける、卓越した能力の賜物でしょう。

 読書量と年収の高さには相関関係がある、とは良く耳目にしますが、徒に数を重ねれば金持ちになれるとは、問屋取次が卸さない。因果関係の博引旁証は整っても、立証はされていないのです。

 野暮天なことを考えるのは止して、町の本屋さんに棚を眺めに訪うとしましょう。