腕時計と車は関係性が深いですね。特にスポーツカーやスーパーカーは其の傾向が強いのではないでしょうか。喩えば、ポルシェとタグ・ホイヤー、ランボルギーニとロジェ・デュブイ、フェラーリとリシャール・ミル(以前にはウブロも)などなど。
而して吾がアルファロメオはと謂うと、過去にはショパールやブライトリングにその名を冠した腕時計があったものの、現在は余り耳目を引くことはないように思います。だんなが識る限りで唯一思い当たるのは、設立から130余年を數える瑞西の老舗時計製造者「エベラール」です。此のマニュファクトリーが手掛ける機種のひとつに「タッツィオ・ヌヴォラーリ」が有ります。
タッツィオ・ヌヴォラーリは1920年代から1940年代に二輪と四輪のレースで活躍したドライバーです。ヌヴォラーリは、1930年にアルファロメオのレース部門である「アルファ・コルセ」に加入し、同社製の車を駆って、タルガ・フローリオやミッレ・ミリアなどの伊太利亜国内の競技に勝利。各国の重賞競技、ル・マン24時間でも優勝杯を手中に収めています。まあ慥かに車はアルファロメオ製なのですが、此の時既にアルファロメオはワークス部門を手放し、ヌヴォラーリが在籍していたのはエンツォ・フェラーリが発足したセミワークスである「スクーデリア・フェラーリ」であり、アルファロメオの性能に不満を抱いていたとも謂われています。
エベラールの腕時計「タッツィオ・ヌヴォラーリ・レジェンド」は背面が透過式のトランスバレントバックとなっており、内部機構が見えます。其の廻転子には金色の「アルファロメオ・ティーポ12C」が配われているのですが、此れ亦た如何なのか。同車はV型12気筒内燃機を搭載する画期的な機種だったものの、其の信頼性は決して高くはなかったそうで、時計のブランドイメージとしては余り宜しくないですよね。
個人的に好もしいのは、簡略化されてはいるものの、タッツィオ・ヌヴォラーリの紋章である「亀」が文字盤に装飾されている点。屹度、時間を見るたびに心を落ち着かせることが出来るのではないでしょうか。
とまれかくまれ、傳説を深掘りすると謂うのは野暮天なのかも識れません。