うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

50-14 BICのボールペン。

仏蘭西製の「BIC オレンジEGボールペン」は、誰もが目にしたことがある或は手にした方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。非常に簡易な結構と無駄のない意匠を持ち、世界で一番売れたボールペン「オレンジビック」。残念ながら2021年に廃番、販売終了となってしまいました。

書き味も良く、何とも潔い体裁でありながら、決して安普請に落ちない。寧ろ使い手の愛着を惹起するのは何故でしょうか。だんなの軽い脳味噌では上手く説明できません。伊丹十三の「女たちよ!」が解説に適任だと思いますので、一節引いてみます。

フランスに「クリケット」というガス・ライターがある。日本でも百五十円くらいで売っている。この値段からしてもおわかりだろうが、構造もデザインも簡単無比である。ガスがなくなれば使い捨てにしてしまう。

ところが、こいつを真似た日本製が現れたのである。この日本製は悲しかったねえ。余りにも日本的なのだ。炎の大きさのアジャスターがついている。ストッパーがついている。ガスの入替えができる。しかもお好みの色と柄各種を取り揃えました、というのだ。

こんな安物をも飾り立てずにはおられない。それがかえって貧乏たらしいことに気づかない。これは安物だからガスがなくなったら捨ててしまうんだ、というところがクリケットの颯爽たるところじゃないの。なんにもわかっちゃいない、のです。

道具における粋とはこう謂うところではないでしょうか。喩えは大事な契約の段、上質で小洒落た筆入れからオレンジビックを取り出しさらりと署名する。そんな使い方が相応しいと思うのは、だんなだけでしょうか。

黒字は以前から持っていた最後の一本です。赤字と青字は、近間の文具店で最近購ったものです。最後のひと文字まで、使い切って捨てるつもりです。