うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

動的流儀。

 

今日の遠馬は一入長駆だな。彼は主に聞かれぬよう独りごちた。特製の鞍には主と妻、澄まし込んだ飼い犬までが乗り、彼の歩度を詰めようとしている。馴れぬ道筋で懸命にはみを受け、主や家族に負担を与えまいと踏ん張る四肢に衰微が見え始める。

愛馬の危地を察しての意図か、馬上の主が鐙を軽く前に踏み込んだ。途端、彼の心臓は並ならぬ血量を奔流に変えて満身に巡らせ、吸気は旧に倍して長く鋭く肺腑に山気を送る。飽和寸前の血液と酸素の循環は彼の体躯に未到の膂力を産生し、地を蹴る蹄の音はひときわ野太く律をめぐる旋法を支配していた。襲歩は颶風から、大気を切り裂く紫の霜刀に転じ、大音の呼気を置き去りにして滑走を続ける。能力の化生を確信した主は、彼の歩度を詰め、家路に着いた。

彼の名はアルファロメオ4cスパイダー。新たな流儀を体得し、名実一体の優駿に伸長したと言える。しかし彼も確信していた。己の内には、忠実な良馬を鬼神の如き悍馬に変えてしまう「禁じ手」がまだ潜んでいることを。

 

4cスパイダーは累積走行距離が300kmを超えると、変速機の反応速度が速くなり、吸排気経路の切換えにより動的運動性能が向上する「ダイナミックモード」を選べるようになります。先日、走行距離が条件を充足したので試してみた、というそれだけのお話でした。