うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

カノンホールマスカット。

現在では否定されていますが、ピオーネは巨峰とカノンホールマスカットの交雑種とされていました。日本原産の巨峰、品種名石原センテニアルは巷間に広く知られていますが、カノンホールマスカットはどうでしょう。だんなが見付けたのは子母沢寛の味覚極楽にある、当時の千疋屋主人斎藤義政氏の聞き書き「西瓜切る可からず」です。抜萃致しますと「果物の王はまず葡萄。ことに京都の山科で木村太一郎という人のこしらえるマスカット・キャナンホールなどは、私はたべ物というよりはむしろ立派な芸術品だと思っている」とあります。千疋屋ご主人をして斯くも言わしめるとは興趣滾滾。ひとつお取り寄せと索めますが、皆目行き当たりません。シャインマスカットは山科でも栽植されていますが、手蔓とはならず。
マスカットの名前の由来は、高貴な麝香即ちムスクに似た香りがすること。鮮やかな黄緑色も印象強いですね。実際は完熟すると黄色く色付くそうです。黄色が勝つと傷んでいると誤解されるため、緑色の袋を掛けて黄緑の未熟な状態で出荷するのだとか。未熟ですから、当然本来の糖度より低い。樹上で完熟させると20度以上の糖度を得るものの、出荷管理も難しく、あまり市場には出ないようです。
談余。千疋屋の斎藤氏も、星ヶ岡茶寮の主人である北大路魯山人には、果物に対して一隻眼を具していると一目を置いていたとか。
山梨県に受注生産品種としてカノンホールマスカットを扱う農場があるようですが、直接確認していないので定かではありません。「大正天皇の何によりの大好物」で、「一粒が小さな蜜柑位もあった」という彼の葡萄。食べてみたいものです。