アルチュール・ランボオの詩を何十年か振りに読みました。迂闊にも忘れていましたが、ランボオには壊されそして何を壊されているのか分からない怖さがあります。読み手も「地獄の季節」にぽつりと置き去りにされてしまう。150年前に紡がれた文章は、より強い毒薬に醸成変成されて読み手を心地良く蝕んでいく。ために、廃れ忘れられることが無いのでしょう。解毒剤は無く、自ずから錬成しなければならないのにとても太刀打ちなぞ出来ません。天才の言葉に慄えるばかりです。
出発
見飽きた。夢は、どんな風にでも在る。
持ち飽きた。明けても暮れても、いつみても、街々の喧噪だ。
知り飽きた。差押えをくらった命。ああ、『たわ言』と『まぼろし』の群れ。
出発だ。新しい情と響きとへ。