<p>今週のお題「自分に贈りたいもの」</p>
きゃふろと読みます。座頭市の原作者としても知られる子母澤寛の随筆集「味覚道楽」に貝ふろの風情、という一篇があります。素焼きの小さな焜炉のようなもので、30センチ近い帆立貝の殻をかけて鍋とする。これに鮭の生筋子を入れ、好みの味付けでぽつりぽつりと食べる。確かに風趣に富んだ美肴を料るには優秀な結構に思えます。
楽天かアマゾンでポチろうと索めましたが、さっぱり見当たらず行き当たりました。古道具屋か骨董店の類を当たるしかなさそうです。
雲丹と鮑を貝殻に詰め、海水で煮る八戸の浜料理が発祥の「いちご煮」。貝風炉でおくさんに拵えてほしいなあ。
汁に浮かぶ雲丹が、朝露に霞む野いちごに見える。キイチゴでしょうか。粋が利いていますね。
原作の座頭市は原稿用紙十数枚程度の掌編。多分野への展延は、実在の侠客「座頭の市」も一驚の贈り物でしょう。
嗚呼心残るのは矢張り、ざとういちより、いちご煮。
貝風炉の、せめて在処を自分に贈りたい。思いは広がるばかりです。