ジュリアに傷心。
アルファロメオの旗艦、クアドリフォリオ。フェラーリ由来の内燃機関と高い剛性のシャシー、舵角を与えれば瞬時に鋭く切り込む操縦性。「羊の皮を被った狼」と謂う喩えがあるが、羊にしてはちいと精悍に過ぎる外見は、差し詰めゼウスの育て親とされる雌山羊か。
国内17台(うち1台は既に全損したと聞く)の100周年記念車には鮮やかで深みのあるモントリオールグリーンの外装色と、金色に輝くブレーキキャリパー、内装には黄色の
ステッチが奢られている。
アクセルを踏めばスレイプニルの如く加速を續け、一般道ではその力の片鱗しか汲み取ることはできないが、それでも十分に愉しく面白い。
軽量化を企図しドアやフェンダーにはアルミ材、ボンネットとドライブシャフトはカーボンで出来ている。510馬力と出力は苛烈だが、4輪駆動ではなく従来的な後輪駆動である。矢張りサーキットに持ち込んで、そう富士スピードウェイの長い直線でアクセルを踏み込んでみたかったが、それも叶わなくなってしまった。
純粋な内燃機搭載のジュリアクアドリフォリオは今年で生産中止となるらしい。江湖では所謂スポーツセダンの需要が無いのだろうか。いや、つくづくアルファロメは喧伝に不向きで、古武士の様に声高に己を主張することが下手なブランドだと思う。此奴は世界で三本の指にも入ろうかと思われるのだが(私見ですがね)低負荷走行時には気筒休止機構が働いて、三気筒の稼働になる。ために、通常の走行モードではその素性を明らかにしない。排気音も穏やかで、慎ましい淑女のようだ。
常況が赦すなら、アクセルの開度を大きく踏み込んでみて戴きたい。豹変と謂う言葉は此のためにあったのだと思い識る。本性は、野獣だ。
御者が私ではとても天稟を引き出せない。性能の一部しか識り得ない。形無しの主より、優れた乗り手に手綱を預けてください。
さようなら。