うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

光彩陸離たる小説。

 

綿矢りさ氏の「蹴りたい背中」を読みました。第130回芥川龍之介賞受賞作。現在も更新されていない19歳11ヶ月での最年少受賞記録は、当時江湖の大きな話題となりました。

だんなも本當はすぐに読みたかったのですが、思い切れず略20年を経ててしまいました。19歳の抜き身の感性に立ち向かえば、屹度圧倒されてしまう。美しいものには毒がある。取るに足らずの馬齢を重ねて、これからも日の当たらない一隅を生きる覚悟が或る程度持てないと、該作はだらしなく読んでは解毒出来ずに只病に冒されるのみと思い適時を俟ち、漸く今回初見に至ったのです。

正しい判断でした。若い頃の感性と謂うのは鋭くて、一点集約されたレーザーの様に対象に向けられます。軈て、収束が解けてぼんやりと薄ら明るい昼行灯になっていくのが関の山で、だんなは今まさにここ。作者の感性は、ちょっと器と謂うか桁が違う。宇宙戦艦ヤマト波動砲みたいな禁忌の破壊力です。譬えが昭和だなあ。

嘘が無く、眠れないほど悩んで、数えきれない間違った答えを出しても澄んでいた心はもう持てません。寂しいけれど、読んで良かったと思いました。

 

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