うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

火花の対極にある破局。

 

日本経済新聞の連載書評記事に「半歩遅れの読書術」があります。だんなは旋毛曲がりの臍曲がりですから半歩どころか三歩くらい、殊にベストセラーや文学賞受賞作品なぞは、巷間の潜熱が聢と冷めてから読む癖を持っています。

ために、今更ながら又吉直樹氏の「火花」と遠野遙氏の「破局」を読みました。どちらも芥川龍之介賞受賞作ですが、作品の印象は真逆でした。

「火花」は登場人物に共感し、感情移入し、揺り動かされて、嗚呼もうズブズブです。片や「破局」では、主人公に一片の共感も抱けません。余りに醜怪な精神心理の畸形と詭計には、とても寄り添うことなど出来ない。作者の企図するところでしょうが、小説と読者の関係は読み始めた瞬間に破局しているのです。

屹度「火花」はこれから幾度も読み返し、度に革めて共感し、ズブズブと深く没入するでしょう。「破局」はもう二度と開くことはありませんが、その衝撃によってできた疵は着着と浸潤を続けるでしょう。そんな小説二作でした。