仏蘭西の美しい高台で、としどしに作られる格別な若やかさの葡萄酒。
マセラシオンカルボニック、炭酸ガス浸潤醸造法による新鮮で華やかな風味。嫋やかな香りと、美しいコランダムの紅い宝石に似て澄んだ色を纏い、毎年11月の第三木曜日に蝉蛻する特別な酒よ。
三島由紀夫の小説「命売ります」の主人公山田羽仁男が、極限までに追い詰められて一秒か或は其れにも足らない生の先行きを危ぶみつつ尚、「テンダロイン・ステーキやウォルドルフ・サラドや、小壜の葡萄酒を注文」するような拙劣で刹那的な飲み方をも許容して呉れそうな儚い酒よ。
して、
どう呼ぶのが相応しいのだ。
なぞ考えるのは、解禁を俟ちさっさと汲み尽くした脳味噌が蹌踉けているためか。
結句、どちらでも不都合はない。
毎年出来栄えを喧伝する惹句などもどうでもいい。
きっと亦た明日も購おう。
そして亦た汲み尽くした空き壜に、からからと干からびた脳味噌で訊ねるだろう。
「君の名は」と。