うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

慊い。

 

芥川龍之介賞受賞歴を持つ私小説作家、西村賢太氏。2月5日に急逝の報を受けました。受賞作の「苦役列車」を読んだのは10年以上前です。印象が強く心に残る作品となったのは、主人公北町貫多が面張牛皮、衣冠禽獣、夜郎自大と端的に申し上げれば屑人間だからでしょう。出自や環境により醸成された狷介により、目を背け本を置きたくなる程の日常を編んでいきます。帯の作品紹介には、「こんな生活とも云えぬような生活は一体いつまで続くのであろうか」「青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と因業」とありますが、自然将来の展望も開けぬ侭、小説は結了します。

2012年に映画化。だんなは未見です。西村氏は映画を評して「中途半端に陳腐な青春ムービー」と打捨て、理由の一つとして「苦役の意味。列車の意味。この肝心の点が拙作の意図するところと乖離し、顧みない」と指摘しています。噛み含めて再読しようと思います。

偶さか近間の書店では備えがなく、以外の著書を購めました。未読の作品や、没後弟子を自称するほど景仰していた藤澤清造私小説も読んでみたい。何よりも私小説作家として巷間の目に立つ日々をどう作品に纏めたものか、興趣が尽きず痛恨の、あきたりない思いです。


人もいない春より抜萃。

「どうで五十年も六十年も、おめおめ生きていようってわけじゃねえんだ。いよいよ駄目となりゃあ、そんときは野垂れ死にしたっていいんだ。まあ、なるようにしかならねえのさ」

衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 

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