うちのふうふとエイトのこと。

黒トイプーのエイトや車。ふうふの日常について。

杜子春。

春という漢字を目にすると、なぜか思い起こします。杜子春は裕福な家庭の生まれですが、遊蕩により財産を使い果たし、今や日々の糊口を凌ぐのもやっと。ある日見知らぬ老人の教えで黄金を掘り当て、大金持ちとなります。しかし資性の不身持ちである杜子春。忽ち身代明いて無一文に戻る。このくだりを二度やらかして、漸く取り巻きの現金自動支払機に過ぎなかったことを悟ります。三度現れ、なおも黄金の在処を報じようとする老人を遮り、弟子入りを願い出る杜子春。老人は道徳の高い仙人、鉄冠子であったのです。師事するには何が起きても「声を出さない」こと。くさぐさの魔性の来襲を退けますが、ついに殺され地獄での辛苦が続きます。馬に姿を変えられた両親が、肉は裂け骨が砕けるほど苛まれても息子を思いやる親心に、禁戒を破り「お母さん」と叫んでしまいます。
すこし長くなりました。芥川龍之介が「杜子春傳」を原典に、独自の解釈と創作を加えた児童向け短編小説です。杜子春が対峙する試練はもはや拷問に近似し、応分の比重をもち委曲を尽くして描出されています。子どもの心的外傷とならないかとは杞憂でしょうか。
杜子春は仙人になることは叶いませんでしたが、人間らしい正直な暮らしをすると心を新たにします。仙人とは不老不死を得て天空を舞い、仙術を用いる超人。人間らしさとは対極の存在ですね。
鉄冠子は杜子春に自分の家と畑を手向けます。今頃は丁度家のまわりに桃の花が一面に咲いているだろうと。桃は仙木、仙果といわれ、邪気を祓い不老長寿を与える力があるそうです。
田舎暮らしで健康長寿を全うする。人間らしい正直な暮らしとはまさに。
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